外国人人材を雇用する際の留意点等について、概説いたします。

1. 募集職種に該当する在留資格の確認

日本に所在する企業等が外国人を雇用したい場合は、外国人が日本で働くことを目的として入国、在留するためには、就労(働く)することが容認されている在留資格を取得する必要があります。当然の事ながら、法令に定める条件に適合する外国人だけがその対象となり、なおかつ、法令に定める範囲の業務しか働くことが出来ません。
拠って、企業等において、外国人を募集したい職種があったとしても、その職種に該当する在留資格が存在していなければ、雇用することはできないということになりますので、その場合は、採用計画を見直さなければなりません。該当する就労(働く)することが容認されている在留資格が存在している場合は、その在留資格の取得基準・条件を確認されて、募集計画を立案することとなります。

在留資格によって、学歴、実務経験年数、従事する業務内容、報酬額、技能試験、受入機関に関する条件の基準等の要件が定められています。


例えば、最も取得数が多い在留資格「技術・人文知識・国際業務」の基準のひとつに大学又は大学院を卒業していることに加えて、大学又は大学院において修得した広い知識及び応用的能力等を活用するものと認められる業務に従事するものであることというものもあります。言い換えますと、大学又は大学院を卒業している者であっても、制限なく如何なる業種、業務にも従事することができるというものではなく、大学又は大学院での修得した知識等を活用しないで出来る業務は認められないということです。大学又は大学院を卒業していない方については、従事しようとする業務について実務経験として職歴10年以上あれば、良いという基準であったり、外国料理の料理人の仕事であれば、その料理の職歴10年以上(タイの料理人は5年以上)が必要であったり、介護業務であれば、社会福祉士の資格が必要であったり、製造業、建設業、農業などは日本語試験4級と業種毎の技能試験に合格すれば、在留資格「特定技能」の対象となったり、又は技能実習制度による途上国への技術移転のため、技能実習生を受け入れている場合も多くありますが、その場合に良好に技能実習2号までを修了した者は、在留資格「特定技能」への変更が認めるというものであったりと働くことができる在留資格の種類、基準は多岐に渡っております。
因みに、入管法別表第二に規定されている在留資格「永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者」は、いずれも就労について制約がないことから、如何なる業種にも就くことが出来ます。
在留資格一覧(29種類)から就労可能な在留資格を御確認することが必要となります。

2. 面接、人選の注意点

外国人を雇用するために、当該外国人を日本に呼び寄せることとなりますので、渡航費用や住居の確保等も生じますし、入社後、すぐに退職されてしまっては企業負担が増加しますので、人選は慎重にすることが必要です。審査に当たっては、当該外国人が過去に日本に入国したことが有る場合は、過去の日本での在留状況も審査の対象となりますので、過去の在留に問題がなかったか、入管へビザ申請をしたことがあるか、申請結果が不許可であった場合は、どんな理由から不許可となったのか等を確認しておくことは重要です。仮に当該外国人が過去に何らかの事情から虚偽申請を行ったことや、入国目的が疑われたことによって不許可となったことが有った場合でも、当該外国人を採用したい場合、事情によっては、許可を得ることが出来る場合もありますので、当所にご相談ください。

3. 就労可能な在留資格の取得(就労ビザ)

外国人が外国に在住している場合

弊所にご相談頂くに当たりましては、採用を検討している外国人人材に従事してほしい業務内容とその者の履歴(学歴、職歴)及び修得している技能・資格などを疎明する資料・書類をご提示頂きます。同時に、雇用する企業等側の疎明資料(例:企業の登記簿謄本、収支決算報告書、広報用パンフレット等)をもご提示頂きます。当所においては、これらの資料及び証言を基に業種、業績等を検分することとなります。これらの検分等を終えますと、当該外国人には在留資格該当性が有ると判断した場合は、同企業等が所在する地区を管轄する地方入管局宛てに「在留資格認定証明書交付申請」を行うこととなります。

外国人が日本に在住している場合

一方、外国人が日本に在留している場合は、外国人自身の住居地を管轄する地方入管局へ在留資格変更許可申請の手続を行うこととなります。同申請においては、「これまでの入国・在留態様」が審査対象に加味されますが、その余は在留資格認定証明書交付申請とほぼ同様です。「これまでの入国・在留態様」については、例えば、留学生において出席率が低かったり、アルバイトの就業時間が資格外活動許可の範囲を超えていたことが発覚している等、これまでの在留状況が好ましくないものであったりすると就労可能な在留資格への変更は認められないことがあります。認められないとなると一度、帰国してから改めて在留資格を取得することを計画するものとなります。

留学生を採用する場合の留意点

留学生においては、通例、在留資格「留学」を有して在留をしておりますが、同在留資格は日本の高校、日本語学校、専修学校、大学、大学院等の学校において教育を受けることを目的とした在留資格となりますので、留学生の採用を検討する場合は、在学中であれば、直前までの出席率は保たれているか、除籍扱いにされていないか、学校は自主退学するのか、卒業するのか、また、卒業が近い場合は、卒業見込みであるかなどの確認が必須となります。
仮に止む負えない事情によらず、出席率が低い状態にあったり、すでに除籍扱いにされていたりすると、それまでの在留状況が良好ではないものと判断されて、完全出国する目的以外の他の在留資格への変更は、変更を認める相当な理由はないとして認められることはありません。
また、留学生においては、アルバイトを行うため、資格外活動許可を取得していれば、在学中において、勉学に支障がない範囲で、週28時間までの就業が可能となりますが、散見される実例としては、アルバイトの就業時間が週28時間を超えてしまったことがあったり、中には、週28時間を大幅に超過している学生もおります。入管において、就職のため、在留資格変更許可申請を行ったところ、その審査の過程において、アルバイトが週28時間を超えて従事していたことが判明すると資格外活動違反として不許可処分が付されてしまい、就職することはできません。
企業側が学生らに直接、過去のアルバイトの就業時間について確認をしても、学生も言い難い内容であろうかと思います。弊所にご依頼いただいた際には、学生の過去の所得状況をを精査しておりますので、おおよそアルバイト時間が週28時間を超えているか否かの判断が可能な場合があります。仮に不許可処分が付されますと、一度、帰国してから改めて在留資格を取得することを準備、計画するものとなります。

転職希望者を採用する場合の留意点

外国人が日本で就業する目的の在留資格を取得して在職していた外国人において、在職していた企業等(以下、「所属機関」と言う。)を退職又は退職する予定にあることから、当該外国人を別の企業等が採用したい場合に、当該外国人が現在、有する在留資格及び在留期間を取得した際に入管へ申告した所属機関を退職する場合は、原則、入管へ申告したとおりの職務に従事していたことが必要となります。入管へ申告したとおりの職務に従事していたがキャリアアップをしたいので転職をしたい、所属機関の経営悪化により、解雇となってしまった等の理由にある場合は、入管法上の在留資格の許可基準等に適合する転職先が見つかれば、転職することが可能であります。
拠って、他社から転職をされる外国人の採用を検討している企業等においては、当該外国人が現に有する在留資格及び在留期間はどの企業等に勤務するために取得したものかを明確にして、職務内容、退職理由、退職日、在留期間等も確認する必要があります。
当該外国人において、転職する企業等での担当業務が現に有する在留資格で行うことができると判断をした場合は、在留期間に余裕があれば、雇用する側はすぐに採用、雇用することも可能ではありますが、入管においては、当該外国人の前職、転職先に係る審査を何ら行っていませんので、雇用する企業等においても外国人においても、当該外国人が現に有する在留資格でその担当業務を行うことができるのか否か不安であります。そのような時に入管へ審査をしてもらうことが出来ます。その手続は以下の「入社後の留意点」に記載している「就労資格証明書交付申請」となりますのでそちらをご参考ください。

外国人の職務内容について

実際の入管への申請においては、会社の経営状況や在職中の従業員の職務内容との兼ね合いなどみて、申請人となる外国人を雇用する必要性、また、その外国人が担当予定としている業務に実際に従事することが見込まれものであるか、虚偽でないと認められるか、また、担当予定の業務量が充分に見込まれるかなど総合的に検分されますので、申請後に、外国人の予定している職務内容や一日の業務スケジュールなどについて詳細な説明を要求されることも珍しくありません。
以上からすると、採用したい外国人がいる企業等又は就職先を決めた外国人自身が行政書士に相談した際に、外国人と企業等の双方の必要となる情報を基に、どのような業務であれば在留資格の取得基準等の適合性が認められて許可となる可能性が有るか否かの判断が大変、重要なものとなりますし、通例、「雇用理由書」の作成、提出が必要となります。

4. 入社後の留意点

採用した外国人が入社した後は、法令に定める範囲で日本人同様に労働保険・社会保険への加入も必要となり、入管へ申告したとおりの業務に従事させることとなります。仮に、企業等の業務の都合上、当該外国人の担当業務を変更したい場合は、改めて、変更予定の業務が、当該外国人が現に有する在留資格で従事することが可能であるか否かを見極めて、可能であると思料される場合は、担当業務を変更して従事してもらうことも可能でありますが、一方、入管においては、変更した業務については何ら審査をしていないため、雇用主においても、当該外国人においても不安な点があります。

そのような時に、入管へ変更後の業務又は変更予定が確定している業務が当該外国人が現に有する在留資格で行うことが可能か否か、入管法令に定める諸条件を満たしているか等を審査してもらうことができます。その手続は、「就労資格証明書交付申請」と称される申請になります。申請の結果、諸条件を満たすと判断された場合は、「就労資格証明書」が交付されますので、交付されれば安心してということになりますし、その後の在留期間更新許可申請の審査についても迅速に行われます。
なお、この「就労資格証明書交付申請」は法令上、申請をすること自体は義務付けられているものではないため、あくまでも任意の申請となりますので、当該外国人と雇用主において、検討するものとなりますが、当所では、通例、申請をしておくことをお勧めしております。

一方、当該外国人の在留期間満了日が近づいている場合は、この就労資格証明書交付申請を行うことなく、在留期間更新許可申請を行う際に、担当業務が変更したことの説明や疎明資料を提出して、総合的に審査していただくという方策も可能でありますが、仮に不許可となりますと一時的に働くことが出来なくなりますし、最悪の場合、当該外国人は急遽、退職して、30日程度で条件に適合する転職先を探さなければならなくなることもありますので注意が必要です。

上記以外には、当該外国人においては、契約した企業等の社名や所在地に変更が生じたり、契約が終了した場合等は、その都度、14日以内に入管局へ指定書式での届出が義務付けられています。この届け出に対しては、罰則が定められています。

5. 雇用した外国人を解雇又は退職があった場合

雇用した外国人が入社した後、例えば、試用期間の結果、職務能力の適性を欠くと判断したり、又は他の会社都合により当該外国人を解雇することとしたり、自己都合で退職をされたりと言ったことがあった場合は、入管法上においては、雇用していた企業等においては、入管への報告等は何ら義務付けられていませんので、必要となる手続きはありませんが、解雇又は退職した外国人を入管へ書面で報告しておくことも出来るようになっておりますので入管当局における在留外国人の適正な管理の面からも報告してことが好ましいでしょう。

6. 外国人人材雇用のリスク回避

以上、外国人人材を雇用するに当たっては、入管法の理解が不可欠なところ、在留資格や取扱基準、法的義務等が多岐に渡り、法改正も毎年のように行われており、行政書士においてもそれらを瞬時に感得することは容易なことではありませんから、一般の企業等においては非常に難題である実情にあります。行政書士においても、外国人の専修学校や大学での専攻内容と就職予定先の実際の業務状況を鑑みて、当該外国人がどのような業務に従事するのであれば、就労可能な在留資格の諸基準に適合すると認められるか否かの判断が極めて重要なものとなりますが、その判断がお粗末なものであったり、好ましくないものであったことから、入管の申請が不許可となって、弊所に相談越される事案も多数、あります。それらの不許可となった雇用理由書等を検分しますと、担当可能となる業務の判断が違えば充分、許可になったであろうとされるものが多く散見されます。
また、ご周知のとおり、これまでに有名企業であっても外国人の雇用に当たって、就労可能な在留資格の取扱基準等についての入管法令等の理解が中途半端であることが露呈され、企業イメージを著しく損なう代償を招いてしまっている事態が散見されます。また、中には、大企業、中小企業を問わず、入管へ申告した内容と異なる業務に外国人を従事させていたことが発覚し、入管法違反として立件、逮捕されてしまった事例も散見されています。

当所では企業等の規模を問わず、顧問契約も行っており、顧問契約を締結された場合は、新規に外国人材の募集計画を立案する前に、ご相談をいただき、法的見解を申し上げたり、その他の入管法関連の法律相談に加えて、企業等にとって有益と思われる情報を積極的に提供させていただいております。外国人人材の採用を検討されている企業等においては当所への個別相談・依頼に加えて、顧問契約もご検討くださり、企業等の実情に合わせて適宜、ご活用いただければ幸甚です。

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