日本の法制度上、「難民(Refugees)」とは,日本も加入している「難民の地位に関する条約」(難民条約)第1条又は「難民の地位に関する議定書」第1条に規定された者で、以下に掲げる5つの理由「⓵人種,②宗教,③国籍,④特定の社会的集団の構成員であること、又は⑤政治的意見」のいずれかに該当し、かつ、これらのいずれかを理由として「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために国籍国の外にいる者であって,その国籍国の保護を受けることができない、又はそのような恐怖を有するためにその国籍国の保護を受けることを望まない者」とされています。難民であるか否かの認定判断は、日本においては法務省(出入国在留管理庁)が所管し、認定された者は、「条約難民」と言われています。
一方、「避難民」については、これを定義した法令等は存在せず、文字通り、「災害や紛争などで避難してきた人々」という意味以外のものは見当たりません。日本政府の表明振りからも明らかなように、主権に基づく裁量に基づき、あくまで人道上の配慮として入国、在留を受け入れるということになっております。これらの定義からしますと、ロシアによる侵略戦争を一時的に逃れたウクライナ「避難民(Evacuees)」は、原則として、「条約難民」には該当しないと言えます。こうした事情から、本日までの間に日本政府が公表した「受入方針」等の表明は、あくまでも人道的な観点から人道的配慮が必要と認められる者を「避難民」として受け入れるとの方針を表明したものと言えます。こうした措置は、「アフガニスタン避難民」に次いで、2例目となります。これに関連してご参考までに付言しますと、現在、ウクライナ政府は戒厳令によって18歳から60歳までのウクライナ男性の全てを国家防衛の任務に従事させるため、国外に出国することは禁じております。これより、仮にこのうちの誰かが徴兵を忌避して国外に逃亡し、何らかの伝手を頼って来日後、難民認定申請を行えば、その者は、「政治的意見」を理由として、「条約難民」と認定される可能性があります。法制度上の「難民(Refugees)」については曲解しておられる例が散見されますので「避難民(Evacuees)」との差異や現行入管法の解釈、取扱までの理解も求められるものとなります。
日本政府の発表を踏まえますと、ポーランド等ウクライナの近隣国に所在する日本の大使館・総領事館において「短期滞在」査証を取得した後に日本へ到着した者は、空港の入国審査官から在留資格・期間「短期滞在・90日」が付与されます。そこで、90日以内に自らが難民であると思う者は最寄りの地方出入国在留管理局において「難民認定申請」を行います。一方、自らが「避難民」であると思う者は「在留資格変更許可申請」を行います。入管当局は、審査の結果、その者が「条約難民」であると認定した場合は在留資格・期間「定住者・1年」、「避難民」であると認めた場合は在留資格・期間「特定活動・1年」を付与します。いずれにしろ、ウクライナから逃れ出て来た者は、いずれかの在留資格を付与され、日本において在留することが可能となります。
この場合に、日本に親族等がいる場合は、その者が身元保証人になることができますが、それらの者がいない時は、本来、「短期滞在」査証は発給されないものとなりますが、現在、特例的に身元保証人がいない場合でも「短期滞在」査証を発給するように取扱われています。現在、日本には1900人ほどのウクライナ人が在住しておりますところ、これらの者がその者の友人及びその友人の友人を呼び寄せる案件やペット同伴希望者もおり、多数の避難民が日本に入国をしております。当所においても来日までのビザ取得手続等を支援しており、これまでに申請したものは全て許可を取得しております。お困りの際は、ご遠慮なく、弊所にご相談ください。
(2022年7月12日更新)