外国人が日本人又は永住者と離婚が成立した後も当該外国人が日本での在留を希望する際の在留資格等について概説いたします。
1. 日本人との協議離婚又は裁判離婚の成立
外国人が日本人と婚姻(結婚)した後、日本で夫婦としての同居生活を送ることを希望して、在留資格「日本人の配偶者等」を付与されて、当該日本人夫と共に、夫婦としての実態の伴う同居生活を送る中、何らかの事情によって、婚姻を継続することが困難な事情が生じたことから、協議離婚又は離婚訴訟による離婚が成立しますと、付与されていた在留資格「日本人の配偶者等」の許可基準を満たさなくなり、配偶者としての活動を行わなくなったため、当該在留資格の「該当性」を喪失することになります。
当該在留資格の「該当性」の喪失とは、、配偶者としての活動を行うことが許可基準となっているものでありますから、、配偶者としての活動を行わなくなったことから、当該在留資格の該当性はなくなるということです。これは、在留資格及び在留期間自体が喪失するということではありません。
離婚が成立したからといって付与されていた在留資格及び在留期間自体までも喪失するということではありません。離婚後も、付与されていた在留資格及び在留期間自体はそのまま残りますし、離婚後もそれまで通り、仕事も自由に従事することが可能です。在留資格の取消措置が講じられているわけでもありますから、現に有する在留資格自体は有効なものとして残っているということになります。過去の行政訴訟による判例からもそのような解釈が判示されております。
なお、在留資格「永住者」と婚姻して、在留資格「永住者の配偶者等」を付与されて在留している外国人も前述と同様の解釈です。
他方、留意すべき点は、入管法上に在留資格「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」の取消事由が定められておりますところ、その規定からすると配偶者としての活動を行わなくなってから6か月以上が経過すると、入管当局は在留資格を取り消す措置を講じることができるとされております。
拠って、6か月を超えない間に他の在留資格へ変更申請をするか、又は本国へ完全帰国をするかのいずれかとなります。なお、「配偶者としての活動を行わなくなってから」というのは必ずしも手続上の離婚成立日ということではなく、実際に配偶者としての活動を行わなくなった日を基準とする実態による認否が採用されています。他の在留資格への変更を希望する場合は、原則、6か月を超えない間に在留資格の変更申請を行う必要があります。(ただし,配偶者としての活動を行わないで在留していることにつき正当な理由がある場合を除く。)
そこで、当該外国人が日本人又は永住者と離婚成立後も継続して日本での在留を希望する事由がある場合には、住居地を管轄する地方入管局宛てに在留資格「定住者」への在留資格変更許可申請を行うことができます。
但し、この場合は、必ず、許可されるというものではなく、法令に定めのないものとしての取扱いとなっており、あくまでも法務大臣が申請内容及び提出された疎明・立証資料に係る信憑性の認否、過去において処分した先例との比較衡量等、客観的に検討し、日本での在留をする必要性等があると認めるべき場合は、法務大臣の裁量によって、特例的に在留資格「定住者」への変更を許可しているものとなります。
法令に定めのない事案であるため、許可基準等は一切、開示されていません。
この申請は外国人が本国へ帰国して在留資格、在留期間を喪失してしまうと申請自体の対象者から除かれてしまいますので、申請を希望する場合は、必ず、付与されている在留期間内に行う必要があります。
この申請が許可されますと在留期間1年、3年、5年のいずれかが付与され、独身者として仕事も自由にすることが可能となります。仮にこの申請の許可を得ることが出来ない場合は、法令に定めのある一般の法定要件を満たすことの出来る他の在留資格への変更を検討するか、又は、本国へ帰国するかのいずれかになります。
2. 離婚成立後、在留資格「定住者」への変更が許可される事例
在留資格変更許可申請が認められる具体的な事例を列挙します。
- 日本人元夫との間に出生した実子の親権者となり、離婚後は同実子を養育・監護する必要がある
- 実子はいないものの、婚姻期間が数年以上にあり及び、かつ、離婚するまでの間、実態的な婚姻生活を維持していたところ、日本人夫が経済破綻を来たしたために離婚せざるを得なく成った
- 実子はいないものの、婚姻期間が数年以上にあり及び、かつ、離婚するまでの間、実態的な婚姻生活を維持していたが、夫(永住者)からのDV(家庭内暴力)が繰り返され、警察沙汰にまでなり、知人宅へ一時、避難して別居し、離婚せざるを得なくなった。等
いずれも入管法に規定されていない特例的な取り扱いのため、極めて限定された許可基準での審査が行われていることが行政先例から伺えますし、審査においては、法務大臣の裁量によって慎重に決定される許可となっておりますから、疎明・立証資料は入念、かつ、丁寧に収集、整備し、申請理由書等の立案、作成に当たっては事実関係を基にして同許可を得るに当たって相当である、との視点から構成することが重要となります。
許可になるであろうと思われる事案であっても、申請理由書や申請書類の内容によって、不許可になってしまうこともあります。自身で申請を行って不許可となってから弊所に相談越された中には、当所に事前にご相談くだされば、許可を得ることができたであろう事案も散見されます。許可基準が開示されていないことから、行政書士においても特に知見、技術、経験が重要な案件となります。インターネット上に誤情報等も散見されますのでご留意ください。
以上からも、変更申請を希望される際は、当所において信頼できる入管法令等に通暁したプロのサポートを受けられることをお勧めする次第です。当所では、多数の事例を取り扱って、許可を得ております。