日本で新たにデジタルノマド向けの在留資格が創設されたことから、2024年3月31日より、日本版「デジタルノマドビザ」としての申請受付が開始されました。これにより、リモートワークを主とするデジタルノマドの方々に、最長6か月間の日本滞在を許可し、配偶者や子供の帯同も可能としました。そのため、日本で利便性の高い生活環境を求める家族にとって理想的な選択肢となります。
当事務所は、2024年4月18日に国内初となる申請を行い、デジタルノマドの在留資格認定証明書(COE)を取得しました。この実績を基に、以下に詳細をご案内いたします。
デジタルノマドビザとは?
デジタルノマドビザは、リモートワーカー向けに特別に設計された日本の在留資格のことを一般にはデジタルノマドビザと称しています。最大6か月の滞在が可能で、家族帯同も認められています。日本国外との契約に基づくリモートワークを行う方が対象で、観光を楽しみながら仕事をすることが可能です。
欧州や東南アジアなどでのデジタルノマドビザ導入の潮流に加え、日本もデジタルノマドの誘致を積極的に推進することとしてデジタルノマドのための在留資格が創設されました。\
デジタルノマドビザの概要と特徴
☑ 在留期間
6カ月まで
☑ 期間更新
不可。出国して6カ月が経過していればビザの再取得は可。
☑ 申請できる人
・リモートワーカーで契約先が日本国外にあること。
・日本政府が指定する49か国の国籍者であること。
☑ 最低の年収要件
リモートワーカーとしての年収が1000万円以上あること。
☑ 家族の滞在
デジタルノマドの配偶者と子供は滞在可。但し、対象となる国籍者のみ(70カ国)
☑ 審査期間
平均1~3ヶ月
☑ 申請先
日本へ短期訪問をして出入国在留管理局へ申請又は本国の住居地を管轄する日本大使館・領事館へ申請
☑ 滞在中の一時出国
可。
デジタルノマドビザの取得要件
デジタルノマドビザを取得するには以下の要件を満たすことが必要です。
- リモートワーク - ITを活用したリモート業務の契約があり、その契約先が日本国外にあること。
- 年収要件 - リモートワーカーとしての年収が1000万円以上であること。
- 医療保険加入 - 日本滞在中の医療保障(死亡、負傷、疾病)のある保険加入が必要。※ 傷害疾病への治療費用補償額は1,000万円以上が必要。
- 査証免除国籍 - 査証免除かつ租税条約締結国籍であること。(49か国)
デジタルノマドビザの対象職業
リモートワークを行う多くの職業が対象となり、具体例として以下が挙げられます。
・フリーランスライター
・グラフィックデザイナー
・プログラマー、デジタルマーケター
・オンライン語学講師、ITエンジニアなど
デジタルノマドビザの対象国・地域
デジタルノマドビザを取得することが出来る対象国・地域は49か国です。
帯同する配偶者や子の場合はさらに21か国が追加され、計70か国です。
対象国・地域一覧
デジタルノマドの家族のビザ
デジタルノマドに帯同する配偶者と子はビザを取得することが可能です。但し、以下の取得要件があります。
1. ビザ取得要件
・査証免除国籍 - 帯同させたい配偶者、子が査証免除国籍であること。
・扶養要件 - 帯同させたい配偶者、子がデジタルノマドに扶養されていること。
・医療保険加入 - 日本滞在中の医療保障(死亡、負傷、疾病)のある保険加入が必要。※ 傷害疾病への治療費用補償額は1,000万円以上が必要。
2. 帯同するとは
デジタルノマドと必ず、同時に日本に入国をする必要はありませんが、デジタルノマドより先行して来日することは出来ません。また、デジタルノマドが出国した後に単独で日本に在留を続けることは出来ません。
3. 扶養を受ける配偶者又は子とは
「扶養を受ける」とは、扶養者が扶養の意思を有し、かつ、扶養することが可能な資金的裏付けを有すると認められることをいいます。また、配偶者にあっては原則として同居を前提として扶養者に経済的に依存している状態、子にあっては扶養者の監護養育を受けている状態のことをいいます。
4. 就労制限
デジタルノマドに帯同する配偶者又は子は日本で働くことは認められていませんので来日後、資格外活動許可を取得することは出来ません。
デジタルノマドビザの在留資格等
1. 在留資格
法令上、「ビザ」と「在留資格」は異なります。
・デジタルノマドに付与される在留資格は、特定活動(告示53号)です。
・帯同する家族(配偶者や子供)に付与される在留資格は、特定活動(告示54号)です。
2. 在留期間
・デジタルノマド本人:6カ月の在留期間が付与され、更新は不可です。ただし、出国後6カ月が経過すれば、再度デジタルノマドビザを取得して、再入国および滞在が可能です。
・帯同する家族(配偶者・子供):原則として6カ月の在留期間が付与され、更新は不可です。同様に、出国後6カ月が経過すれば、再度デジタルノマド家族のビザを取得して、再入国および滞在が可能です。
3. 在留カード
デジタルノマドおよび帯同家族には在留カードは交付されません。代わりに、入国審査時または在留資格変更許可時に、パスポートへ許可証印が貼付されます。
申請の流れ
申請方法は以下の2通りがあります。
(1)日本国内での申請方法
日本へ短期滞在中に必要書類を揃えて出入国在留管理局で申請し、在留資格認定証明書(COE)が交付された場合、そのまま在留資格の変更手続きが可能です。ただし、審査に時間がかかる場合は、一度帰国し、結果を待つ必要があります。
Our Support:
専門行政書士が事情に合わせた必要書類の案内、書類確認、申請書類の作成、提出、結果の受け取りまで全て代行することが可能です。審査中の出入国在留管理局とのやり取りも全て行政書士が行います。
(2)海外での申請方法
必要書類を揃えて本国の日本大使館または領事館へ申請者が直接申請します。書類に不備があるとビザ発給が拒否される可能性があるため、慎重に準備を進めることが重要です。
Our Support:
行政書士が事情に合わせた必要書類の案内、書類確認、申請書類の作成までを代行することが可能です。
必要書類
1.滞在中の活動予定表
2.職業、年収額を証明する資料
3.民間医療保険の加入証書及び約款の写し( 傷害疾病への治療費用補償額は1,000万円以上。)
4.結婚証明書 1通(配偶者が帯同する場合)
5.出生証明書 1通(子が帯同する場合)
※上記の他に、申請書、証明写真が必要です。当事務所では事情に合わせて理由書を作成して提出します。
※特に2と3は不備が多くありますので注意が必要です。
専門行政書士によるサポート内容
- ビザ取得の可能性判断
申請者の職業や年収、過去の在留歴などの情報をもとに、ビザ取得の可能性を詳細に分析します。これにより、不確実な申請を回避し、成功率を高めます。 - 必要書類の案内と確認
申請者の個別の状況に応じて、必要な書類をリスト化し、準備のサポートを行います。書類の不備や不足を防ぐため、詳細なチェックも行います。 - 申請書類の作成
申請者の具体的な事情に合わせた申請書類を、適切かつ丁寧に作成します。行政書士がプロの視点で法令や審査基準を踏まえて書類を整えます。 - 出入国在留管理局への申請代行
申請者の希望により、行政書士が出入国在留管理局への申請手続きを代行します。複雑な手続きをスムーズに進め、申請者の負担を軽減します。。 - 申請結果の受取と報告
行政書士が出入国在留管理局で申請結果を受け取り、迅速に依頼者へ結果をお知らせします。必要に応じて、次のステップのご案内も行います。
許可事例のご紹介
当事務所が2024年4月18日に提出した申請が、日本版デジタルノマドビザとして国内初の案件となりました。申請者はアメリカ国籍の作家さんです。これに基づき、国内初となる在留資格認定証明書(COE)が交付されました。
その後、複数の案件のCOEも交付され、申請者の中には日本滞在中であったことから、在留資格変更申請を行い、10月24日に許可証印を取得したケースもございます。この許可証印も国内初の許可事例とのことでした。これらすべての案件について、当事務所が申請から許可受取まで一貫して対応いたしました。
当事務所の取扱った最近の申請では1カ月弱でCOEを取得しております。
実際の申請エピソード
2024年4月18日、当事務所は東京出入国在留管理局において、日本初のデジタルノマドの在留資格認定証明書(COE)の交付申請を行いました。当時は制度運用が開始されて間もなく、入管局側も受付体制が整っていない状況でした。また、担当職員にとっても初めての申請案件となり、手続きに関して不明点が多くありました。そこで、当事務所の行政書士が法改正の趣旨や運用の詳細について丁寧に説明し、申請を受理してもらうことができました。その後、当事務所が出入国在留管理庁へ照会したところ、当初は審査体制など内部事情により審査に時間を要してしまったとのことでおよそ6ヶ月弱でCOEが交付されました。これは時間がかかり過ぎたとのことで、現在は、出入国在留管理庁において審査体制が整備されたため、今後の申請では迅速な審査が可能になったとのことです。
当事務所への相談状況
当事務所では、2024年12月5日時点で既に 7名のデジタルノマドの在留資格認定証明書(COE)の交付申請を行っており、ご相談件数は増加しており、特に アメリカやヨーロッパ出身の方からの依頼が多くある状況です。
デジタルノマドビザの今後の課題
諸外国のデジタルノマドビザは、日本の制度と比較して滞在期間が長く設定されており、多くの国では更新も可能です。一方、日本のデジタルノマドビザは最長で6カ月の滞在に限られています。また、現行の運用では、在留資格「短期滞在」により年間通算で最大180日間の滞在が可能とされています。一部の国を除き、短期滞在は最大90日間の在留が認められており、一度完全に出国すれば、すぐに再入国することも可能です。このため、短期滞在の在留資格を利用し、観光を楽しみながらリモートワークを行うことが可能なケースもあります。こうした点を踏まえると、デジタルノマド向けの在留資格には全く特別感を感じないという意見が見られます。
また、多くの方がビザの審査期間を気にされており、審査が長引くとニーズに合わなくなります。そのため、迅速な審査を実現することが重要です。デジタルノマドの在留資格は中長期在留者には該当しないとされているため、短期滞在ビザの申請と同等の迅速な審査が適切ではないかと考えます。
また、福岡市が主催するアジア最大級のデジタルノマドイベント「Colive Fukuoka(コリブフクオカ)」が2024年10月に開催され、約40カ国から200人のデジタルノマドが集結しました。しかし、当法人が知る新聞記者によると、参加した外国人に話を聞いたところ、日本のデジタルノマドビザが創設されたことを知らない人が多かったとのことです。日本が諸外国とのデジタルノマド誘致競争で勝利を収めるためには、より魅力的で戦略的な在留資格制度の検討が求められているように感じます。
日本政府はデジタルノマドの在留資格創設に当たって、実際のニーズや利用者のフィードバックを踏まえ、適宜、デジタルノマドの在留資格の運用を検討するとの意向を示しています。今後の動向に注目し、変更があれば迅速にお知らせしていきたいと思います。
専門解説
デジタルノマドビザを取得した本人および帯同する家族は、入管法上、中長期在留者には該当しないため、在留カードの交付対象外となります。したがって、日本滞在中は在留カードが発行されません。
再入国の可否については、外交ビザや公用ビザの場合と同様に、在留カードがなくても再入国が可能です。具体的には、出国審査時に有効な旅券(許可証印があるもの)を提示し、再入国の意思を申告することで、みなし再入国許可制度が適用されます。これにより、一時的な出国や再入国が認められます。
根拠法令
出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件に定める53号、54号
よくある質問(FAQ)
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申請を行う際の注意点は
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実際の申請においては、リモートワークの契約先や年収証明書、保険加入証明書など、申請者がビザの取得要件を満たしていることを証明する書類を、わかりやすく整理することが重要です。職業や年収状況によって、収入証明書も注意が必要です。民間医療保険の加入証明書に関しては、簡潔に記載されていて、保険内容や保険期間が明確でなかったり、約款などの書類が膨大になる場合があります。そのため、審査官が確認しやすいように工夫を施すことが効果的です。当事務所では、提出資料をもとに申請理由書を必ず作成して申請を行います。これにより、ビザ取得のプロセスが円滑に進むようにしています。
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行政書士に依頼するメリットは
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ビザの審査には時間がかかることが多く、数カ月を要する場合も珍しくありません。さらに、提出書類に不備があると審査期間が延びる可能性があります。そのため、行政書士に依頼することで、書類の正確性が高まり、迅速なビザ取得に繋がることが期待できます。また、実際には、行政書士の経験や技術力等によっても審査のスピードは異なります。
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デジタルノマドビザを何度も取得することは可能ですか?
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はい、可能です。特に取得回数に制限はありません。ただし、デジタルノマドビザを再取得して再度来日する場合、前回の出国から6カ月が経過していることが条件となります。
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現在、就労ビザで滞在していますが、デジタルノマドビザへ変更できますか?
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いいえ、変更申請はできません。デジタルノマドビザは在留資格の変更申請の対象外とされています。そのため、デジタルノマドビザを取得するには、在留資格認定証明書(COE)の交付申請を新たに行う必要があります。
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6カ月の在留期間で住居を借りることはできますか?
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一般的な賃貸物件の契約は、短期滞在者には難しい場合が多いです。そのため、民泊、エアビー、ウィークリーマンション、ホテルなどの短期滞在向けの施設を利用することをおすすめします。
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デジタルノマドビザで入国後、他のビザに変更することはできますか?
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デジタルノマドビザ制度が導入された当初、他の在留資格への変更申請に関する明確な規定はありませんでした。しかし、2024年9月下旬に審査要領が整備され、相応の理由がない限り変更申請は認めないものとなりました。これは短期滞在ビザと同様に、原則として変更申請を認めない方針に基づくものです。したがって、会社経営の開始や日本人との結婚などで在留資格を変更する必要がある場合は、必要書類を揃えた上で、在留資格認定証明書交付申請を行うことが原則となります。
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デジタルノマドビザを取得して帰国した後に短期ビザですぐに来日することは出来ますか?
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デジタルノマドビザと短期滞在ビザは入国目的が異なりますので、すぐに来日することは可能です。但し、短期ビザは年間を通して通算180日までという規定がありますので、その範囲であれば、来日は可能となります。
デジタルノマドビザの取得手続でお困りの際は、当事務所にご相談ください。
初回相談は無料で、経験豊富な行政書士が丁寧に対応いたします。
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